小論 U 「名付ける」という行為は、連綿・混沌とした世界の中の特定の対象に個別性を見出すことであり、それは命名者と命名された対象との間の他とは違った特別な関係を示すものであると私は考える。たとえば新しく天体や元素、動物を発見した者はそれに対する命名権を持つ。これは、宇宙や物質世界、自然界といった、本来はシームレスに広がっているはずの世界の中に「個」を見出し、その「第一発見者」が自分であるという特別な関係の証と言える。さらに、ペットに命名するという行為も同様、それが本来は差異の殆ど無い同種の野生の個体や他人に飼われている個体とは異っており、「自分が飼っている」という点で自分と特別な関係にある個体であるということを示す意味を持つ。 確かに、筆者の述べるように、「名付ける」という行為が人間の一人芝居であり、観念の虚構であるということは否定できない。しかし、形而下では虚構でこそあれ、人間の精神や意識の上においては、「名付ける」という行為は人間にとって以上述べたような働きを持つのではないか。