【2024年度】2/8 国語【情報コミュニケーション学部】：明治大学 受験BBS

明治大学の2024年度情報コミュニケーション学部【2/8 国語】スレッドです。
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その年の司召の除目じもくで、若君は侍従になった。帝や東宮をはじめ、天下のあらゆる人々は、侍従の君を一目見ただけでいつまでも忘れることができず、高貴な家柄とはいえ帝や東宮から格別の寵愛ちょうあいを受けるのももっともだと誰もが納得した。琴ことや笛の音、漢詩、和歌、何気に書き流した筆遣いまでが世に類がないほど素晴らしく、容姿はもちろんのこと、普段の振る舞いや他人との交流の様も実に見事で、言動も理にかなって今から申し分なく、世情や朝廷の儀式などにも熟知し、この世の人とは思われぬほどであった。権大納言も、「さてどうしたものか、これもしかるべき因縁なのだろう」といつまでも嘆いていても詮方ないので、侍従の君が少しずつ立派になっていく様を嬉しくもいとしく思い、心の慰めとした。幼い頃の侍従の君は自分の姿を気にせず、世間には同じような者もいるに違いないと考え、心のままに振る舞っていたが、他人の有様を見聞きするうちに、次第に女でありながら男の姿をしている自分の異常さを自覚し、見苦しく思うようになった。しかし、だからといっていまさら考え直しても仕方がない。「どうしてわたしは、奇妙にもこのように人と違ってしまったのであろう」独り嘆きながらも慎重に身を処し、人から距離を置いて宮仕えする心遣いは誠に見事だった。
時の帝は四十余歳で、極めて立派な人柄だった。また東宮は二十七、八歳で、いかにも皇族らしい容姿で気品に満ちていた。この二人が、「侍従の君に妹がいて、その容貌が評判高く優れている」という話を耳にし、熱心に宮仕えを勧めた。権大納言は、姫君がどうしようもなく内気であることを理由に断り続けたが、「本当に入内できるように育てられたらよかったのだが」と嘆いた。帝は、亡き后との間に生まれた女一宮が一人でいることを不憫に思い、片時も目を離さず、大切に育てていた。この皇女以外には、帝にも東宮にも子どもがいなかったため、人々は天下の大事として我も我もと男御子の誕生を祈祷し続けていた。帝には右大臣の大君が女御として仕えていたが、摂政や関白の娘ではないので后にはなれないでいた。若い女一宮は後見がしっかりしていないせいか、ひどく頼りない様子だったため、帝はいつも気に掛けていた。侍従の君がこの世のものとは思えぬほど凜々しくなっていくのを見る度に、女一宮の後見役をさせたいと考えるようになった。